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2021年6月10〜12日。 太陽光発電システムとヒートポンプ式温水暖房機の設置工事を実施。 施工業者は札幌に本社を置くF社さん。 施工内容は、大雑把に言えば ・太陽光パネル:XSOL(5.2kW) ・ヒートポンプ式温水暖房機:Panasonic(9kW) ・総工事費:215万円(太陽光146万,HP暖房69万)、10年、1.99万円/月 という感じです。
そんな中、10年前のオール電化時の電気給湯機の簡易点検に来たA社の営業さんが、屋根に架台を設けず平置きすることで50〜60万円くらいから太陽光パネルの設置が可能、という話を持ち込んできた。(実際にはこの金額は現実的ではないが...) 新築時からのエネルギー消費形態を時系列でまとめてみると以下のようになります。
上の表の通り、新築時は給湯、暖房共に灯油で、都市ガスが来ていない地域のためプロパンガスを避けてIHを導入していたのが我が家の初期のエネルギー消費形態。 そして2011年、これまでノーリツ製の石油給湯機のバーナーが10年の間に3度壊れたことと、灯油価格の高騰(30円/L台から80円/L台へ)が引き金となりオール電化への変更を決断しました。 給湯システムはヒートポンプ式電気給湯機(エコキュート)に変更しました。
暖房も、温水循環式のパネルの熱源を電気ボイラーに置き換えることで電化しましたが、各部屋に設置されている既存のパネルヒーター(ラジエーター)を、そのまま活かす事ができたのも決断した理由としては大きかったと思います。 しかし、泊原発の停止の影響で、北海道電力の電力料金単価が徐々に上がっていき、2021年5月現在、ドリーム8の深夜電力単価は8円→14円/kWhに、暖房用のホットタイム22ロングの電力単価も10円→16円/kWhと、看過できないレベルにまで値上がりしていました。
そこで、ついでにA社の営業さんに太陽光パネルと暖房費の改善について聞いてみた...というわけです。 その中で出てきた暖房プランとして、当初は「灯油に戻す」「寒冷地エアコンを補助暖房で使う」という提案もありましたが、「灯油に戻す」は今更感が有り過ぎ....寒冷地エアコンも、実は我が家は元々設置していた寝室のエアコンに加えて、昨年夏に寒冷地非対応のエアコンを2FのLDKに導入したばかり.... 最後に出てきたのが電気ボイラーをヒートポンプ式温水暖房機に交換し、ドリーム8、ホットタイム22ロングをやめて、電力プランは「eタイム3プラス」に一本化するという案でした。 どうして最後だったかというと「現在のセントラルヒーティングの循環水の設定温度を55℃よりも高く設定することがあるご家庭にはお薦めしていない」ということだったらしい。 これは、ヒートポンプ式温水暖房機の設定温度が最高でも55℃迄しか上げられないのが理由ですが、我が家の場合、現状の電気ボイラーにおいても、寒かった20-21年シーズンに初めて50℃に設定したくらいで、これまでは45〜48℃程度で冬を過ごしていたという話を聞いて「それなら」ということで薦めてきたという経緯です。
取っ掛かりがA社でしたので候補の筆頭ではあったのですが、今回はさらに3社を加え、4社での相見積としました。 まずA社ですが、パネルメーカーがQセルズ。Qセルズは元々ドイツのメーカーでしたが、現在は韓国のハンファに買収されています。 海外メーカーとしては日本国内でのシェアは1位で、一定の評価はありますが、低価格でシェアを伸ばしたメーカーの割に、A社の提示した単価は36万円/kWで、4社の中で一番高い。 B社は施工実績4万棟以上を誇る全国規模の会社。 チョイスしたパネルメーカーはHIT撤退との噂のパナソニック。蓄電池とセットでパワーコンディショナーの分を浮かせて、太陽光発電システムのkW当たり単価を26.9万円まで下げてきた。 ただ、いかんせん、B社は暖房をやってないという事実が判明。 補助暖房にポータブル石油ストーブなんて提案してきた時点で「変だな」と思った(^^; C社は札幌にある、4社の中では一番規模の小さな会社。小さな会社は嫌いじゃないのですが、初回から代理の人物が来たり、パネルメーカーがカナディアンソーラーから長州産業にいきなり変わっていたり、対応がちぐはぐな印象。 換気システムの追施工を提案してきたり、面白いなと思った部分はあるけど、何せレスポンスが悪い!こっちから言わないと動かない。 F社は、初めに「ヒートポンプ式温水暖房機は寒いのでお薦めしない」というスタンスで、寒冷地対応エアコンを補助暖房として使い、セントラルヒーティングは、温度設定を低温にして電気ボイラーをそのまま使用するという提案をしてきたので、当初「ここは無いかな」というのが正直な感想でした。 ただ、担当の営業さんの対応は真摯で、しかもよく見るとパネルの単価が28万円/kWで、かなり頑張ってくれている。 パネルメーカーは京都に本社を置く国内メーカーのエクソル。
で、2021年4月2日、結局当初から候補の筆頭だったA社と一度は275万円で契約し、他の3社には丁重にお断りの連絡を入れました。 がしかし、半ば勢いで契約したものの、冷静になって考えてみるとkW当たり36万円というパネルの単価は余りにも高い! 自分で作成したシミュレーションでも、275万円は15年でも回収できない。 下のグラフは、経産省調べによる住宅用太陽光発電システムの調達価格の相場(2020年)です。青色の既築案件の相場は25〜40万円/kWで中央値は32.7万円/kWとなっています。 で、この経産省の平均価格は適正価格か?と問われれば必ずしもそうとも言えません。 適正じゃない工事価格事例も含まれているため、平均値を釣り上げているからです。 ただ、だからといって信頼できないかと言えばそんなこともなくて、実際2021年になると新築案件で5kW規模でも20万円/kWを切るケースも見られるようになってきていますが、2020年版の上のグラフの価格下落傾向を読めば、直近3年の下限値は2018年25.5万→2019年23万→2020年21.5万という感じで、新築案件での下落の傾向は概ね市場価格を反映していると捉えて良さそうです。 それでも我が家の場合、新築よりも単価がアップする既築案件であること、また津軽海峡を渡る北海道の場合、太陽光パネルに限らず、価格が全国平均よりも高めとなる傾向にあることから、自分としては、経産省調達価格相場の既築案件の中央値よりも下側が適正範囲と判断しました。 そうなると、A社の36万円はその範囲から大きく逸脱しており、かなり高額であるといえます。しかも低価格が売りのQセルズなのに.... 4月10日、クーリングオフを念頭に再交渉した結果、価格的な歩み寄りは無かったため、契約を取りやめました。 A社の担当さんによると、クーリングオフは業者側に告知の義務はないらしいが、告知をする前の契約はその効力を持たないらしく、あっさりと解除に応じてくれました。 (契約時或いは契約後にクーリングオフについて告知した時点から8日間が適用のリミット) 結局、振り出しに戻りました。 はじめっから仕切り直しかなと考えていたのですが、ダメ元でF社に連絡を入れてみました。 既に1週間以上前にこちらからお断りの連絡を入れていたので、袖にされるのを覚悟の上で「28万円/kWの単価+ヒートポンプ式温水暖房機を10年払で2万円/月を切れるかどうか」を逆提案させてもらいました。 結果的に、5.2kW+ヒートポンプ式温水暖房機で215万円、1.99万円/月という提示があり、F社さんにお願いする事にしました。 なお、蓄電池に関しては、現状では製品寿命内でのイニシャルコストの回収は困難と判断しました。 10年後に太陽光発電による売電単価が半額になった時、蓄電池本体の価格が下がっていたら考えることにしました。
やはり大きいのは暖房費です。 これは電力使用量のグラフ。当たり前ですが電力使用料金と傾向は同じです。
冬期のヒートポンプ暖房を利用することによる割引分以外は、両者は近い傾向のグラフになっています。 ただ、これは実データの案分から推定したものなので当然と言えば当然です。 「eタイム3プラス」の実データが無い以上、こうして推定値を使うしかないわけですが、ここで推定値を算出している主な理由は、ここで出した昼間の電力使用量の割合(1,184 / 3,551 = 0.33)を収支シミュレーションの計算で使用している「日中自家消費率」としているためです。
1日当たりの日射量は以下の要領で求めます。 新エネルギー・産業技術総合開発機構のWebサイトにアクセス。 https://www.nedo.go.jp/library/nissharyou.html 上にも書いていますが、我が家の場合、冬もまめにパネル上の雪払いを実行するつもりなので、発電量は冬期もフルに計上しています。 そのために3階廊下にスライドタラップを設置して、家の中から屋根上に出られるようにしています。 ただ通常は積雪地の場合は冬期の発電量はゼロでシミュレーションするみたいです。 損失係数は概ね以下の通りですが、各社、古かったり更新されたりで、データとしてちゃんと整えるのが難しいので、安全側の結果となる「その他」の73%(100-15-5-7)でも問題はないと思います(^^;
何故ヒートポンプ式温水暖房機なのか? ヒートポンプは、簡単にいえば気体を圧縮すると温度が上昇する原理(ボイル・シャルルの法則)を利用しています。 ヒートポンプ式温水暖房機とは、外気から熱(0℃でも氷点下でも熱を持っています)を取り込んでこの熱を冷媒に移し、コンプレッサーで圧縮することで冷媒の温度を上げ、この熱を使って温めた温水をパネルや床暖房の配管に循環させる方式の暖房装置です。
これまで使っていた電気ボイラーは、電気を熱に換えて直接お湯を沸かす、いわば電気ポットと同じ原理なので、消費電力が非常に大きい(ウチのサンポットEWF-991で6,000W)というウィークポイントがあります。 一方、ヒートポンプ式温水暖房機は気体を圧縮して得られる熱を利用する原理のため、ざっくり言うと、ほぼコンプレッサーを回すための消費電力だけで済む、という事になります。 また、水を温めてお湯を作り、これを各部屋のパネルヒーターに循環させるという方式は電気ボイラーと同じなため、既存のセントラルヒーティングのパネル(ラジエーター)を流用できるというメリットがあります。 やはり、一度セントラルヒーティングに慣れてしまうと「エアコンやストーブの前は暖かいけど、トイレやユーティリティーや玄関は寒い...」という状況はなかなか受け入れられません(^^; ただ、懸念材料もあります。 それは、外気温が低すぎると満足に加温することができず、暖房能力が落ちてしまうことです。 上述の続きで説明するとすれば、"役目を終えて家の中から戻ってきた冷媒は熱を奪われて冷え切っているので、これに活力を与えて再び送り出す役目の外気の気温が低すぎると、圧縮しても満足な加温ができない"....という感じでしょうか。 シャープが世界で初めてヒートポンプ式温水暖房機を開発した当時は、最低外気温の限界が-5℃程度だったそうです。 その後各社で改良が進み、現在は最低外気温-25℃でも何とか4kW程度の暖房能力が得られるようにはなっています。
これで札幌を含む道央圏での使用が可能なレベルにはなっているようですが、旭川や北見など、-20℃を下まわる日が出てくるような地域では、単独での運用は難しいケースもあるみたいです。 なお、F社さんが「ヒートポンプ式温水暖房機は寒い」と主張していた理由は、採用機種が半密閉式のサンポット ASHP-1044Xであったことが関係していると想像します。 半密閉式は、密閉式よりも運用が手軽な分、暖房能力が劣ると言われているからです。 下のグラフ(往き水55℃)を見ても、-5℃を下まわった時点で既に4kW程度まで落ち込んでいることが分かります。
誤解無きよう補足しますが、ASHP-1044Xが決して製品として劣るという事ではなく、北海道でメイン暖房としての使用を意図した製品ではないと思われる、という事です。 (逆に、三菱エコヌクールレオなどの密閉式は、東北や北陸地方の都市部などで運用するにはオーバースペック気味で、消費電力が大きく電気代が上がってしまうなどのデメリットが出てくると想像します) 結果的に我が家のようなスチール製の密閉式パネルヒーターは、循環液の入れ替えが容易じゃない反面、暖房能力は半密閉式や開放式よりも優れているそうです。
今回非常に役立ったのは、三菱電機が公開している「ヒートポンプ式冷温水システム技術マニュアル」という文献。 以下、これを参考にしながら前出の4機種について、暖房能力の計算を行いました。 まず、諸々の条件を用いて、暖房負荷を計算します。 今回、札幌市の設計外気温-8.8℃に加えて、外気温-12.5℃で室温20℃をキープできるかどうかも検討しました。 各社公表している暖房能力特性図から暖房能力値を読み取り、暖房負荷に補正比1.1を乗じた補正暖房負荷を上回ることが出来るかどうかをチェックしていきます。 下は三菱エコヌクールレオとパナソニックWH-FD09A2。 コロナのエコ暖システム11.6とサンデン エコルノ。 考察に書いている通り、上の三菱、パナソニックも含め、概ね札幌でも問題ないという結果となりましたが、日中でも-13℃を下まわるような日は、ちょっと厳しい可能性もあります。 これは蓋を開けてみなければ分かりません。 なお、サンデン エコルノは諸元に不明な事項が多いので評価は避けました。 暖房能力的には電気ボイラー時代と遜色ないという結果が出ていますが、気温が著しく低下した時の挙動は今の段階ではなんとも言えません。 なおヒートポンプ式温水暖房機は、価格と暖房能力計算を踏まえた上でパナソニックのWH-FD09A2を採用することにしました。
まずは太陽光パネルの導入費用を算出。 ローンは10年ですが、初期投資の回収目標年は12年に設定しています。 (自分が作ったこのシートでは、28万円/kWの単価では10年での回収は難しいです) 経年劣化を考慮すると、12年でも太陽光パネル単独での回収は出来ませんでした。 エクソルの太陽光パネルは、他社同様に15年保証で、80%の発電能力保証は25年。 まあ、太陽光パネルは以前よりもかなり寿命が延びていて、長い目で見れば初期投資コストは回収できると思われるので、数字程心配はしていません。 注視すべきなのは、年々出力は落ちながらもほぼ半永久的に発電し続けるであろう太陽光パネルよりも、10〜15年が寿命とされるパワーコンディショナーの方ですね。 化学反応的な動作原理の太陽電池に対して、パワコンの場合、直流を交流に変換するという荒技(笑)を毎日繰り返す装置なわけで....。 保証期間との兼ね合いでうまく修理・交換に持って行けるかどうかです。 続いてヒートポンプ式温水暖房機の収支。 12年間でヒートポンプ式温水暖房機本体分のイニシャルコストは回収できますが、太陽光パネルの不足分は回収し切れていません。 10年で完済する前提で、2年分の利子の差益を加算してはじめて12年でトントンになるという計算結果です。 自分としてはかなりシビアに計算しているつもりなので、実際にはこれよりもプラス側に振れることに期待しています。 まあ、傾向が判るのは1年後ですね。
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